Classici giapponesi con furigana
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キャラコさん
キャラコさん
久生 十蘭
Leggi キャラコさん di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 26.767 caratteri · 54 schermate
ところが、それは嘘だった。
それから、また五日ほどたった夕方、遅くまで二人が帰って来ないので、河原まで迎いにゆくと、二人は鉱坑のそばの石に腰をかけて、白い夕靄のなかでこんな会話をしていた。
靄の向うで、つぶやくような山下氏の声が聞える。
「いよいよ、この山ともお別れだ」
ながい間をおいてから、三枝氏の声が、こたえた。
「そう、いろいろなものとお別れだ」
「いろいろなものに……」
山下氏としては、珍しく感情のこもった声だった。
また、ポツンと間があく。渓流の音が、急にはっきりと聞えだす。
山下氏が、つづけた。
「われわれの労苦がむくいられることなどは、すこしも期待していなかったのに、思ってもいない方法で、感謝された。……かりに、神というものがあるならば、神様とは、なかなか油断のならない人格だね」
「おれも、そう思うよ。……あの二人さえ、怪我をしたことを、ちっとも情けながっていないんだからな。それどころか、たいへんなもうけものでもしたようにかんがえている」
「幸福なやつらだ」
「正直なところ、おれも、足ぐらい折りたかった。あんなにしてもらえるなら」
「馬鹿なことをいうな」