Classici giapponesi con furigana
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キャラコさん
キャラコさん
久生 十蘭
Leggi キャラコさん di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 14.444 caratteri · 30 schermate
おどろいてふりかえって見ると、それは悦二郎氏だった。
黒い服の上に鼠色のブルーズを着、肩に採集瓶をかけ、木の枝のようなものを手に持っている。チャペックの『虫の世界』の幕開きに登場する、あのベルトラン先生のような超俗なすがたである。
「暑い、暑い」
と汗をふきながら、立ったままで、いきなり、
「……じつは、林の中で、わからない鳥の声をききましてね。それを確かめるので、つい遅くなってしまったのです。……チッチョ、チッチョと鳴く。……どうも、なに鳥かわからないのですね。……それで、そのあとを蹤けてきいているうちに、チッチョのあとへ、チョッピィと鳴いてくれたので、ああ、これは仙台虫喰だとわかって、安心して帰って来たのです」
果して、悦二郎氏は、今朝の五時ごろから林の中で小鳥の声を追い廻していたのだった。チョッピィと鳴いてくれてご同慶のいたり。さもなければ、鳥のあとをしたって、軽井沢まででもついて行ったことだったろう。
キャラコさんは、がっかりと力を落とす。……それから、ゼンマイのゆるんだ時計のような声をだす。
「チョッピィと鳴いてくれて、ほんとうによかったわねえ」