Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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キャラコさん

キャラコさん

久生 十蘭

Leggi キャラコさん di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 24.012 caratteri · 48 schermate

Aozora Bunko

そして、

「うん、もうじき帰ってくる」

と、いくども同じことをつぶやいた。

七時すぎになって、ようやく梓さんが帰って来た。

唇まで紫色になって、歯の根も合わないように身体をふるわせながら、眼を伏せて煖炉のほうへ寄って来た。裾にも髪にも氷がからみつき、涙をもよおすようなあわれなようすをしていた。

みな、涙ぐみながら、てんでに毛布やクッションを持ち出してきて、幾重にも梓さんの身体に巻きつけて『着ぶくれ人形』のようにしてしまった。

陽気なピロちゃんが、熱い紅茶を持ってきて、梓さんの口もとへもって行った。

「これ、飲みなちゃいね、温たかくなるからさ」

夕食がすむと、思い立ったように、みなが大騒ぎをはじめた。おおげさなだけで、ちっとも活気がなかった。梓さんは、大きな眼をあけて、悲しそうにそれを眺めていた。

ユキ坊やと鮎子さんが、手をとり合っていそいで広間を出て行ったが、しばらくすると、二人とも眼を真っ赤にして帰ってきた。

キャラコさんは、梓さんを朝までしっかりと腕の中に抱いていた。

暁方になって、梓さんが、ひくい声で、ささやいた。

「ママに、来てくれるように、ゆうべ電報をうったの」