Classici giapponesi con furigana
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ゼーロン
ゼーロン
牧野 信一
Leggi ゼーロン di 牧野 信一 (まきのしんいち) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 14.533 caratteri · 29 schermate
なぜなら私は、或る理由でどんな村人に出遇っても具合の悪い状態であったから、本来ならば最も速やかな風になってここらあたりは駆け抜けてしまわなければならなかったのである。それ故塚田村でもその村道を選べばこんな河原づたいをするよりは倍も近道であったが、余儀なくかなたの鎮守の森を左手に畦道を伝って大迂回をしながら凡そ一里に近い弧を描いた。そして次の猪鼻村を目指しているのであった。私はあちこちの段々畑や野良の中で立働いている人々が、この騒ぎに顔を挙げようとするのを惧れて、人々の点在の有無に従って、交互に慌しく己れの上体を米つきバッタのようにゼーロンの鬣の蔭に飜しながら尊大な歌を続けて冷汗を搾った。この不規則に激烈な運動につれて背中の荷物は思わず跳ねあがって私の後頭部にゴツンと突き当ったり、背骨一杯を息も止まれと云わんばかりにハタきつけたりしたが私は、やがて到達すべきピエル・フォンの「森蔭深き城砦の」饗宴の卓を眼蓋の裏に描きながら、この猛烈な苦悶に殉じた。
漸くの思いで塚田村を無事に通り越すと、今度は、丘というよりは寧ろ小山と称うべき段々の麦畑が積み重って行く坂を登って、猪鼻村に降りるのである。