Classici giapponesi con furigana
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きなだむら
ゼーロン・淡雪 他十一篇
牧野 信一
Leggi ゼーロン・淡雪 他十一篇 (きなだむら) di 牧野 信一 (まきのしんいち) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 27.321 caratteri · 54 schermate
スッポンというのは養魚場の宇佐見金蔵の渾名で、彼は自ら空呆けることの巧みさと喰いついたら容易に離さないという執拗ぶりを誇っていた。彼は松のいうことを、え?え?え? と仔細らしく聞直して、相手の鼻先へ横顔を伸し、たしかに聞き入れたというハズミに急に首を縮めて、
「一体それは、ほんとうのことかね」と仰山にあきれるのだ。――「だが、しかし万豊の芋畑を踊舞台に納得させるのはれっきとした公共事業だ。堀田君と僕は、先ずこの点で敵の虚を衝き……」と彼はふと私たちに聴かれては困るというらしく口を切って、法螺忠や障子の穴へ順々と何事かを囁いたりした。そして、うつらうつらと首を振っていた。彼の眼玉は凹んだ眼窩の奥で常々は小さく丸く光っているが、人が何かいうのを聞く度に、いちいち非常に驚いたという風に仰天すると、たしかにそれはぬっと前へ飛出して義眼のように光った。その様子だけはいかにも肝に銘じて驚いたという恰好だが、本心はどんなことにも驚いてはいない如く、眼先はあらぬ方をきょとんと眺めているのだ。多分彼は、真実の驚きという感情は経験したためしはないのではなかろうか。――頤骨がぎっくりと肘のように突き出て、色艶は塗物のような滑らかげな艶に富み、濃褐色であった。