Classici giapponesi con furigana
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きなだむら
ゼーロン・淡雪 他十一篇
牧野 信一
Leggi ゼーロン・淡雪 他十一篇 (きなだむら) di 牧野 信一 (まきのしんいち) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 27.321 caratteri · 54 schermate
何でも、その晩は、二人とも怖ろしく亢奮して、東の空が白む頃おいまで、
「帆を挙げろ!」
「オーライ――」
「旗をたてて……、ランラ、ランランラ!」
などと声をそろえて狂い廻ったのであったが、その時、二人で、
「朝の掲旗式!」
で、「七郎丸」の旗を壁に懸けたのが、いまだにそのままそこにあったのだ。
七郎丸は、それ以来引つづいて、この観測台に務め続けて来たのである。何故か僕たちは、その一度だけで、まるで痛いものを避けるが如くに旗に関する一言ずつの会話も取り交さなかったのである。
一言弁明して置くが、僕のAは飲酒家であるが、七郎丸との交渉は大方僕のCのみである。僕らが大酔のあまりかかる超現実性を帯びた亢奮状態を露わしたのは、その凡そ十年近き以前の一夜だけで、今日まで僕たちの間では平調を脱れた音声すら一言だって交された験しもないのである。七郎丸の涙などを見たのは僕にとっては、さっきの居酒屋の騒ぎが空前の奇蹟に違いなかった。
「ねえ、七郎丸、あれはおそらく十年も前のことになるだろうな。今晩は、ひとつ旗に絡まるお前の夢について……」
語らないか――と僕が、静かに目を瞑りながら徐ろに首を傾げると彼は、