Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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きなだむら

ゼーロン・淡雪 他十一篇

牧野 信一

Leggi ゼーロン・淡雪 他十一篇 (きなだむら) di 牧野 信一 (まきのしんいち) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 27.321 caratteri · 54 schermate

Aozora Bunko

彼は自分の姓名を非常に嫌うという奇癖の持主で、うっかりその名を呼ばれると時と場所の差別もなく真赤になって、あわや泣き出しそうに萎れるのであった。

「厭だ厭だ厭だ、堪らない……」と彼は身震いして両耳を掩った。それ故彼は、めったな事には人に自分の姓名を明したがらず、

「ええ、もう私なんぞの名前なんてどうでもよろしいようなもので……」と言葉巧みにごまかしたが、それは徒らな謙遜というわけでもなく、実はそれが神経的に、そして更に迷信的に適わぬというのであった。それで私も久しい間彼の名前を知らなかったし、またふとした機会から彼と知合になり、どうして生活までを共にするまでに至ったかの筋みちを短篇小説に描いたこともあり、実際の経験をとりあげる場合にはいつも私は人物の名前をもありのままを用いるのが習慣なのだが、その時も終始彼の代名詞は単に「御面師」とのみ記入していた。私はそのころ「御面師」なる名称の存在を彼に依ってはじめて知り、やや奇異な感もあって、実名の頓着もなかったまでなのだったが、後に偶然の事から彼の名前は水流舟二郎と称ぶのだと知らされた。私はミズナガレと読んだが、それはツルと訓むのだそうだった。