Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ヒルミふじんのれいぞうかばん

ヒルミ夫人の冷蔵鞄

海野 十三

Leggi ヒルミ夫人の冷蔵鞄 (ヒルミふじんのれいぞうかばん) di 海野 十三 (うんのじゅうざ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 14.412 caratteri · 29 schermate

Aozora Bunko

しかし新しい治療をするについては、面倒でも、しっかりした臨床実験の上に立つことが必要であった。そのためにヒルミ夫人は朝早くから夜遅くまで、手術着に身をかため、熱心に入院患者を切ったり縫ったりした。

ヒルミ夫人の評判は、いよいよ高くなった。博士は結婚せられてたいへん仕事に熱心を加えたという賞讃の声が方々から聞えた。全くヒルミ夫人は、その昔、田内新整形外科術をマスターするために見せた熾烈なる研究態度のそれ以上熾烈な研究慾に燃え、病院のなかに電気メスの把手を執りつづけたのである。しかしヒルミ夫人の研究熱は、その昔の純粋なのに比べて、これはただ若き夫万吉郎に媚びんがための努力であったとは、純潔女史のために惜しんでもあまりある次第だが、なにがこうもヒルミ夫人を可憐にさせたかを考えるとき、夫人の夫万吉郎に対する火山のように灼熱する恋慕の心を不愍に思わずにはいられない。

不愍がられる値打はあったであろうヒルミ夫人の立場であったけれど、その狂愛の対象たる万吉郎にとって、それは必ずしも極楽に座している想いではありかねた。

早くいえば、不良少年あがりの万吉郎にとっては、ヒルミ夫人一人を守っていることに倦き倦きしてきたのであった。