Classici giapponesi con furigana
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ボニンとうものがたり
ボニン島物語
久生 十蘭
Leggi ボニン島物語 (ボニンとうものがたり) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 20.772 caratteri · 41 schermate
といった。
上邸内の久太夫のお長屋は、割場といっていたもとの会所の跡で、板敷のところを道場にして、そこに久太夫が一人で住んでいる。
七尾駒三郎と深志甚左衛門は、降りだした雪を踏みながら久太夫の長屋へ出掛けて行くと、久太夫は三畳だけ畳を敷いたところに切腹の場をこしらえ、貧乏徳利と竹皮包みを膝の前にひきつけて、二人の来るのを待っていた。
座につくと、深志は「今日がお別れになるのだそうだ」と笑いながら久太夫に会釈した。「おぬしは勝手なやつだ。長年のよしみも思わず、一人だけで、楽なところへ抜けて行こうというのかい」
「おれは行くよ。おぬしらは六十、七十まで生きのびて、馬鹿な苦の世界で、いいだけ仰っつ反っつするがよかろう。冥土の明窓から見ていてやるぞ」
気がついて、駒三郎がたずねた。「腹を切るというが、鰺切庖丁ひとつ見あたらぬ。なんで腹を切る気だ」
久太夫はうなずいて、
「よく気がついてくれた。腹を切るのに、脇差の借り立てもなるまいから、切れものはここに用意をしておいた」
そういって、膝前の貧乏徳利を顎でさしてみせた。
深志は感慨を催したらしく、武者窓越しに露路の雪を見ながら、