Classici giapponesi con furigana
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ボロやのしゅんじゅう
ボロ家の春秋
梅崎 春生
Leggi ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.411 caratteri · 263 schermate
その夜遅く、蟹江四郎は日記帳に、次の如く書き込みました。
『夜すみれにおもむき、久美子に予が衷情を打ち明く。久美女それを諒とせり。帰来、いささか虚脱を感ず。幸福とはかくの如きものか』
実際なんだかがっかりしたような気分でした。なんでそんな気分になるのか、自分でもはっきりしないのでした。それから彼は、しきりに考え考えしながら、更につづけて書き入れました。
『思うにこの世は仮の世なり。約束の上においてのみ成立するものなり。すなわち人生は演技なり。それには舞台装置も少々必要とするなり』
なんだか妙にむずかしくなって、何を書いているのか我ながら判らなくなってきたものですから、彼は舌打ちをして、日記帳をばたりと閉じました。そしてうっとうしい顔付になって、大きく背伸びをしました。実はこの日記文の古風なスタイルは、某文豪の日記の文体の模倣なのでした。彼はそれを頃日貸出台で読み耽り、すっかり影響を受けてしまったという訳です。しかしどうもこういう文体では、現代的な憂愁を表現するのは、ちょっと至難なことのようですな。
それから日が経って、すこしずつ暖かくなってきました。