Classici giapponesi con furigana
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ボロやのしゅんじゅう
ボロ家の春秋
梅崎 春生
Leggi ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.411 caratteri · 263 schermate
そう呟きながら、彼は自分の日記帳をぺらぺらと忙しくめくりました。七月十五日のところをあけると、彼はじっとそこに眼を据えました。そこにはこう書いてありました。
『七月十五日。晴。暑き日なり。
帰途、電車の中にて、臼井君と一緒になる。あいたずさえて駅を降り、畠中道を家路に急ぐとき、一陣の風来たりて、臼井君のカンカン帽を吹き飛ばす。臼井君大いに周章狼狽してそれを追う。
予すなわち抱腹絶倒せり』
俺が何も知らずに抱腹絶倒などしていた同じ日に、久美子はSの背中の痣をまさぐったりしたのだな。悲痛な色をうかべて、蟹江はそう思わざるを得ませんでした。するとあのおとなしそうな、あさぐろい久美子の顔が、今までとは違った印象として、胸に浮び上ってきました。その顔は彼の想像のなかで、にこやかにわらっているのでした。悲嘆と憤怒と哀憐の念が、嵐のように彼の心をみたしました。哀憐の念というのは、久美子に対してと言うより、おもに裏切られた自分自身に対してです。
それ以来彼は、ぼんやりしている時とか、印刷物の中にSという活字を見た時などに、ふとそのことを思い出して、そっと唇を噛むのでした。