Classici giapponesi con furigana
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ボロやのしゅんじゅう
ボロ家の春秋
梅崎 春生
Leggi ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.411 caratteri · 263 schermate
『とにかく一度こいつの背中を見ねばならぬ』
ある土曜日、猿沢の家で酒の馳走になりながら、彼は強くそう思いました。久美子の死後も、それまでの慣習上、彼は毎土曜猿沢家を訪問し、夕飯や酒を御馳走になっていたのでした。
『それも早急にだ。来年の夏まで待つというわけには行かない』
食卓のそばでは猿沢夫人が、子供を寝巻に着換えさせていました。もうそろそろ夜は寒いので、それはネル地の寝巻です。猿沢好みの派手な柄でした。その時ちらと子供の背中が見えたのです。すべすべと柔かそうな、しみひとつない小さな背中です。それから直ぐ猿沢佐介の背中を聯想して、蟹江はそう考えたのでした。
「背中が出たよ。早く着せなさい、風邪を引いてしまう」
と猿沢が盃をふくみながら、夫人に注意をしました。猿沢が『背中』という言葉を発音した時、蟹江はかすかな身慄いをかんじました。
少し経って、蟹江はわざとらしくせきばらいをして、掌を肩にあてぐりぐり揉みながら言いました。
「どうも近頃、肩が凝ってねえ」
「揉んで呉れる人がいなくなって、気の毒だね」
と猿沢はかるく受けました。猿沢の顔は、鼻を中心として、もう相当あかくなっていました。