Classici giapponesi con furigana
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ボロやのしゅんじゅう
ボロ家の春秋
梅崎 春生
Leggi ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.411 caratteri · 263 schermate
彼とあうとき、発田はいつもきらりと眼を光らせて、彼を見た。彼があいさつしない限りは、頭を下げなかった。そして話しかけられるのを恐れるように、足早にとっとっと通りすぎた。
彼の家と発田の家は、どちらも白木の持ち家で、しかも造りが同じであった。間取りから方角まで同じであった。発田は子供がいなくて、夫婦だけでその家に住んでいた。発田の家と造りが同じだということは、時々彼にある感じを起させた。生活の中の感覚や情緒が、ある程度住居の形に影響されることを思うとき、発田のことがいつも漠然と彼の胸に浮んでくるのであった。たとえば便所にゆくために日の当りの悪い縁側をふむ時とか、また部屋の中から庭を眺めている時でも、そこにある情緒は彼ひとりのものでなく、発田や発田のおかみさんも持つだろうということを、彼の意識に自然に入れていた。彼は発田の家のなかをのぞいたことはなかった。しかしその中に住んでいる発田夫妻の動きを、彼は彼なりに類推していた。その想像のなかでだけ、彼は発田夫妻とむすびついていた。
発田は終戦前、朝鮮で視学をやっていたという話であった。そのことを彼は白木から聞いた。