Classici giapponesi con furigana
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ボロやのしゅんじゅう
ボロ家の春秋
梅崎 春生
Leggi ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.411 caratteri · 263 schermate
卵を数えて紙袋に入れながら、親爺はそう答えた。彼はふたたび土間の鶏に眼をおとした。鶏はくちびるをかみ合せたまま、寂莫として立っていた。そして鶏冠から眼のあたりにかけて、黒い血がおびただしくこびりついていた。人間の声が聞えるのか聞えないのか、鶏は相変らず土間に突ったったまま、びくとも動かなかった。肩を張り翼をふくらませたその姿勢に、戦いの意志が単なる形としてだけ残っているようであった。血のかさぶたの下に、瞼は薄黝く閉じられていた。
(まだ生きてはいるんだな)
蜆をこの鶏とわけ合って食べたことを、彼は考えていた。しかし今日からは、白木はもう蜆を持ってこなくなるだろう。
(そうしていよいよこの俺も――)卵を入れた紙袋を受取りながら彼は思った。(家もろとも他に売られる破目になるかも知れない)
金を払って、彼は店を離れた。あるくにつれて、卵は袋のなかで微かな音を立てて鳴った。
すでに駅に近かった。小菅までこの駅から、相当な時間がかかる筈であった。電車の中で読む雑誌でも買おうと思って、彼は本屋の前に足を止めた。台の上にはたくさん雑誌が並んでいた。刺戟がつよいあくどい表紙の雑誌が、ずらずら並んでいるその間に、中山がやっている週刊雑誌の最近号が、すこし表紙がめくれてはさまっているのを、彼は見つけた。