Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ボロやのしゅんじゅう

ボロ家の春秋

梅崎 春生

Leggi ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.411 caratteri · 263 schermate

Aozora Bunko

何を飲んだんだね」

「全く余計なお世話だが、聞きたければ教えてやろう。粕取焼酎という代用酒よ。お前もそれか」

軽蔑したように鼻を鳴らす音がした。

「清酒を飲まずに代用焼酎で我慢しようという精神は悪い精神だ。止したが良かろう」

まことに横柄な言い方だが口振りは淡々としていた。そういえば隣の呼気は清酒のにおいのような気もした。

「飲むものはインチキでも酔いは本物だからな。お前は何か勘違いしてるよ」

僕はそう言いながら眼を開いて隣を見た。僕より一廻り大きな男である。眉の濃い鼻筋の通った良い顔だ。三十四五になるかも知れない。黒い暖かそうな外套の襟を立てていたが、赤く濁った眼で僕を見返した。膝の間から掌を抜いて僕は男の外套に触れて見た。

「良い外套を着ているじゃないか。これなら小刻みに動く必要もなかろう」

男は微かに眼尻に笑いを浮べた。しかし笑いはすぐ消えて何か堪える顔付になった。

「この外套、要るならやるよ」

「何故くれるんだね」

「だってお前は寒いのだろう」

「そうか。ではくれ」

いささか驚いたことには男は立ってさっさと外套を脱ぎ出した。下には黒っぽい背広を着ていたがネクタイは締めていなかった。