Classici giapponesi con furigana
ja-reading.com
Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.
ボロやのしゅんじゅう
ボロ家の春秋
梅崎 春生
Leggi ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.411 caratteri · 263 schermate
馬は口でくいしめ、歯をすり合わせながら、目に見えぬその網目を、しきりに噛み破ろうとしていた。歯を鳴らす音が、ここまで聞える。生乾きの掌で数珠をしごくような音だった。
「汲取屋さんの馬が、カスミ網を食っていますよう」
もし叫ぶとするなら、こんな風に呼べばよかったのだろう。そう気がついた時は、実際にもう手遅れだったし、叫び出すきっかけもすでに失われていた。誰に聞かせるために叫ぶのか、それも私には曖昧であった。見る見るうちに、馬は地団太を踏むようにしながら、網のあちこちを食い破ったり、引き裂いたりしてしまっていた。そして自分の体が充分通れる裂目をつくると、馬は急におとなしくなって、一段低くなった隣家の庭に、自分の胴体をもて余すようなゆっくりした動作で、しずしずと降りて行った。そしてすぐその栗毛の姿は、低い家のかげに消えた。すこし経って、その家の裏手にあたって、キャッという甲高い女の叫び声が聞えた。古畑ネギという、私の隣家のお内儀さんの声なのである。四十過ぎの、いつも地味な恰好をして、ぼそぼそと口を利く女だけれども、その時はよほどびっくりしたのだろう。その悲鳴とともに、なにか固いものが、がらがらとくずれ落ちる音がした。