Classici giapponesi con furigana
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レモンのはなのさくおかへ
レモンの花の咲く丘へ
国枝 史郎
Leggi レモンの花の咲く丘へ (レモンのはなのさくおかへ) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 71.016 caratteri · 142 schermate
女子 ほんにそうかも知れませぬ。(間)何彼と申しましても、私は一つの願いに捉われている身でござりますれば、その願いの届くまでは、何んと申しても貴郎様の御親切にお答え申すことは出来ないのでござります。
公子 一つの願いとはどんな願いでござります。それを私に、お話し下さるわけにはなりますまいか。
女子 一つの願いは、また一つの呪詛のように思われてなりませぬ。それをお話し申すは、やすいことでござりますけれど、お話し申しても何んの役にも立たぬことでござりますれば……。
公子 それは、あまり、情無いお言葉と申すもの。が、その情無いお言葉は今に始まったことではなく、昔からのことでござりました。あの裏庭の無花果の陰で、さびしい花を毟っては、泉水へ流しながら、あれほど私が情をこめて、心のたけを申しました時も、甘くはずして、はっきりとした御返事は下されず。また、海に臨んだ岩陰の、人手と桜貝とで取りまかれた藻の香の強い洞穴で、人魚同志が語るように、睦まじく話し合うた時も、恋の物語になる時は、屹度、いつかどうかおはずしなされます。さりとて情無く振り切りもなされずに、恋の僕の狂うのをじらして遊ぶ、悪性の姫君のように、気をいらだたせるお心が、私には怨めしいよりも、なつかしく、また慕わしいとは、よくよくのことでござりまする。