Classici giapponesi con furigana
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せんきゅうひゃくさんじゅうにねんのはる
一九三二年の春
宮本 百合子
Leggi 一九三二年の春 (せんきゅうひゃくさんじゅうにねんのはる) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 21.942 caratteri · 44 schermate
二階へ登ってゆくと、もう数人作家同盟の婦人作家たちが来ている。いね子は床の間よりに敷いた床の上にどてらを羽織って半身起き上り、顔を見るなり、
「ああ、よく来てくれました」
と云った。
「どうなの?」
「もう大抵いいんだけど、ひどい熱が出ちまった。こないだ雨の中をビシャビシャに濡れて歩いたもんだから……」
「窪川さんは? 出られるの?」
「出られるんじゃないかしら。きっと虱だらけになって来ると思って、ちゃんと着物を用意しているんだけれど……こないだ行って親子丼をたべさせて来た」
姙娠のためにやつれ、また風邪でやつれながら、窪川いね子は持ち前の落着きと微かなユーモアを失わず、おいしいお茶を入れてくれた。
「戸台さんがゆうべから帰らないのよ。どうしちゃったのかしら……」
同志戸台は日本プロレタリア文化連盟で働いている。大体「コップ」に対する官憲の妨害は書記長や同志窪川が捕えられた時に始ったのではなかった。ほとんど今年の始めから、絶えず書記局は襲われ、一人や二人、短期の犠牲者は順ぐりであった。それと闘ってやっと来ていたのだが、昨夜からまた戸台の帰らない事実は皆をやや不安にした。