Classici giapponesi con furigana
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ひとあしおさきに
一足お先に
夢野 久作
Leggi 一足お先に (ひとあしおさきに) di 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 40.200 caratteri · 79 schermate
私はその上を片足で飛び飛び、向うの棚の端まで行ったが、その端の方に並んでいる小さな瓶の群の中でも、一番小さい一つを取り上げて、中を透かしてみると、何も這入っていないようである。キルクの栓を開けて嗅いでみても薬品らしい香気が全く無い。
私はその瓶を片手に持ったまま、室の隅に飛んで行って、そこに取り付けてある手洗場の水でゆすぎ上げて、指紋を残さないように龍口栓の周囲まで洗い浄めた。それからその瓶を懐中に入れて、又も一本足で小刻みに飛びながら棚の向う側に来たが、ちょうど下から三段目の眼の高さの処に並んだ、中位の瓶の中でも、タッタ一つホコリのたかっていない紫色のヤツを両袖で抱え卸して、月あかりに透かしてみると、白いレッテルに明瞭な羅馬字体で「CHLOROFORM」……「十ポンド」と印刷してあった。
その瓶の中に七分通り満たされている透明な、冷たい麻酔薬の動揺を両手に感じた時の、私の陶酔気分といったら無かった。この気持ちよさを味わいたいために、私はこの計画を思い立つのだと考えても、決して大袈裟ではないくらいに思った。
私はその瓶を大切に抱えたまま、ソロソロと月明りの磨硝子にニジリ寄った。