Classici giapponesi con furigana
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みうらろうじんむかしばなし
三浦老人昔話
岡本 綺堂
Leggi 三浦老人昔話 (みうらろうじんむかしばなし) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 113.637 caratteri · 224 schermate
「置いてけえ。」
心の迷いや空耳とばかりは思っていられなくなりました。眼のまえにいるお幾は、どうしてもほんとうのお幾とは見えません。置いてけの声も、こうしてたび/\聞える以上、どうしても空耳とは思われません。阿部さんは起き直って蚊帳越しに訊きました。
「おまえは誰だ。」
「幾でございます。」
「嘘をつけ、正体をあらわせ。」
「御冗談を……。」
「なにが冗談だ。武士に祟ろうとは怪しからぬ奴だ。」
阿部さんは茶碗を把って叩き付けようとすると、その手は自由に働きません。さっきから寝入った振りをして兄の様子をうかゞっていた新五郎が、いきなり跳ね起きて兄の腕を取押さえてしまったのです。押さえられて、阿部さんはいよ/\焦れ出しました。
「新五郎。邪魔をするな。早く刀を持って来い。」
新五郎は聴かない振りをして、黙って兄を抱きすくめているので、阿部さんは振り放そうとして身を藻掻きました。
「えゝ、放せ、放せ。早く刀を持って来いというのに……。刀がみえなければ、槍を持って来い。」
さっきの云い渡しがあるから、新五郎は決して手を放しません。兄が藻掻けば藻掻くほど、しっかりと押さえ付けている。