Classici giapponesi con furigana
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しゃんはい
上海
横光 利一
Leggi 上海 (しゃんはい) di 横光 利一 (よこみつりいち) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 145.628 caratteri · 292 schermate
故郷では母親は今頃は、緑青の吹いた眼鏡に糸を巻きつけて足袋の底でも縫ってるだろう。恐らく彼女は俺が、今ここのこの舟の中へ落っこっていることなんか、夢にも知るまい。――いや、それより秋蘭だ。ああ、あの秋蘭め、俺をここからひき摺り上げてくれ。俺はお前にもう一眼逢わねばならぬ。俺はお前のいったマジソン会社へこれから行こう。しかし、俺は秋蘭に逢ってさて何をしようというのであろう、とまた彼は考えた。だが、彼は逢うたびに彼女にがみがみいった償いを一度この世でしたくてならぬのだ。
しかし、ふとそのとき、参木は仰向きながら、秋蘭の唇が熱を含んだ夢のように、ねばねばしたまま押し冠さって来たのを感じた。すると、今まで忘れていた星が、真上の空で急に一段強く光り出した。彼は橋の上を見た。橋にはもう支那人の姿は見えなくて、ぼろぼろと歪んだ漆喰の欄干だけが、星の中に浮き上っていた。彼は船から這い上ると、泥の中に崩れ込んでいる粗い石垣を伝って道へ出た。彼はそこで、上衣とズボンを脱ぎ捨てて襯衣一枚になると、一番手近なお杉の家の方へ歩いていった。しかし、彼は今朝甲谷と別れるとき、お杉の家の所在を聞いたのは聞いたのだが、今頃お杉がまだたしかにそこにいるかどうかは明瞭に分らなかった。