Classici giapponesi con furigana
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ふしぎなしま
不思議な島
Leggi 不思議な島 (ふしぎなしま) di Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 6348 caratteri · 13 schermate
僕はしぶしぶ立ち上りながら、老人の前へ手を伸ばした。
「じゃきょうは失礼します。」
「そうですか。じゃまた話しに来て下さい。わたしはこう云うものですから。」
老人は僕と握手した後、悠然と一枚の名刺を出した。名刺のまん中には鮮かに Lemuel Gulliver と印刷をしてある! 僕は思わず口をあいたまま、茫然と老人の顔を見つめた。麻色の髪の毛に囲まれた、目鼻だちの正しい老人の顔は永遠の冷笑を浮かべている、――と思ったのはほんの一瞬間に過ぎない。その顔はいつか悪戯らしい十五歳の甥の顔に変っている。
「原稿ですってさ。お起きなさいよ。原稿をとりに来たのですってさ。」
甥は僕を揺すぶった。僕は置火燵に当ったまま、三十分ばかり昼寝をしたらしい。置火燵の上に載っているのは読みかけた Gulliver's Travels である。
「原稿をとりに来た? どこの原稿を?」
「随筆のをですってさ。」
「随筆の?」
僕は我知らず独言を云った。
「サッサンラップ島の野菜市には『はこべら』の類も売れると見える。」
(大正十二年十二月)