Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ふしょうのあに

不肖の兄

豊島 与志雄

Leggi 不肖の兄 (ふしょうのあに) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 18.889 caratteri · 39 schermate

Aozora Bunko

散歩の帰りにもまた通って見た。

それから、翌日も、そのまた翌日も、彼はその辺を歩き廻った。簾をかけた二階の窓の中には、いつも二人の女が、せっせと書き物をしていた。何を書いてるのか、往来からは分らなかった。家も相当に立派で、素人下宿とも見えなかった。

そして彼には、夜の散歩が一つの楽しみとなった。窓の女の髪形から横顔の恰好を、すっかり覚え込んだ。さほど綺麗じゃないが、現代式の理知的な、女学生とも職業婦人ともつかない様子だった。いろんな空想が彼の頭に描かれた。

それが可なりの間続いた。そして、十月の初めに暴風雨が襲った。その暴風雨の後、彼女達の窓には、簾が取払われて障子が閉切られた。障子にはやはり明々と電燈の光がさしていたが、彼女達の横顔はもう見られなくなった。それで彼も、その薄暗い通りの散歩を止してしまった。

「どうです、」と僕は云った、「それでも彼は精神的に汚れていませんかね。」

母は腑に落ちないような顔付をした。

「下らない。」と兄が横合から口を出した。「お前の小説と同じだ。馬鹿げた作り話だ。」

「それじゃあ、ねえお母さん、こんなのはどうです。」

或る時彼は寄席に行った。