Classici giapponesi con furigana
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しがつばか
世相・競馬
織田 作之助
Leggi 世相・競馬 (しがつばか) di 織田 作之助 (おださくのすけ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 19.112 caratteri · 39 schermate
耳の附根まで赧くなった。彼は入山のいないことが残念だった。二人で「カスタニエン」を出て行くところを、入山に見せてやりたかった。
彼は胸をわくわくさせ乍ら、幾子のあとに随いて出た。「カスタニエン」の主人には十分もすれば帰ると言って出たが、もしかしたら、永久に帰って来ないかも知れない。
並んで心斎橋筋を北へ歩いて行った。
「話て、どんな話や」
「…………」
幾子は黙っていた。彼も黙々としてあるいた。もう恋人同志の気分になっていた。だから、黙々としている方がふさわしい。
異様に汚ない彼が美しい幾子を連れて歩いているのは、随分人目を惹いた。が、彼は人々が振りかえってみるたびに、得意になっていた。
心斎橋の橋のたもとまで来ると、幾子は黙って引きかえした。彼も黙って引きかえした。が、大丸の前まで来た時、彼は何か言うべきであると思った。幾子は恥かしくて言えないのだから、自分が言えばそれで話は成立するわけだと思った。で、口をひらこうとした途端、いきなり幾子が、
「話っていうのはね。……あなた、入山さんとお友達でしょう?」
「うん。友達や」
彼の顔はふと毛虫を噛んだようになった。