Classici giapponesi con furigana
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ふたおもてくらべぼたん
両面競牡丹
酒井 嘉七
Leggi 両面競牡丹 (ふたおもてくらべぼたん) di 酒井 嘉七 (さかいかしち) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 12.317 caratteri · 25 schermate
それと、申しますのも対手は誰でもございません。私――ええ、間違いなく、私ではございませんか……。
かようなことを申しますと、何を阿房なことを、どうして、お前の他に、お前さんがありましょう。それは、他人のそら似というもの――と、お笑いになるかも存じません。それは、世間には、よく似た方がございましょう――私によく似たお方も、また、私が似ている方もおありになるでございましょう。しかし、似たと言うのは、あの場合、決して、正しい言葉ではございません。まさしく私が朝に夕に、鏡の中で見なれている、私自身に、相違ないではございませんか。私は、その瞬間、ぞっとして、背筋を冷たいものが走った様に感じたのでございます――瘧の発作にでもとらわれたような慄えを感じて参りました。私でない私、そうしたもので、どうして、目に見えたのでございましょう。窓の向うには、『おりえんたる・ほてる』でございますか、巨大な、白亜の建物が、霧の海を背景に、朧げに浮んでおります。魔物のような濃霧は、窓がらすの上を這うように流れております。何か不思議なものが、いまさらのように、その中に見えるようでございます。