Classici giapponesi con furigana
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ぼしぞう
久生十蘭短篇選
久生 十蘭
Leggi 久生十蘭短篇選 (ぼしぞう) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 48.344 caratteri · 96 schermate
しょうがないからそれを仕入れてきて、柄付鍋で火燗をして油漬鰯で一献献上したのはいいけど、なにしろ七勺たらず。二人でひと舐めふた舐めしたと思ったらそれでおしまい。膝に手を置いて神妙にあとを待っているから、お屠蘇はもうチョンなのよというと、おやおや、へんだねえ。なんなのさ、これは、って怒ったでしょう。あんな情けないことなかったわ」
やすはおっとりと笑って、
「なけれァないっていやいいのよ。あんなしみったれた飲ませかたをするから。でもエッフェル塔はよかったわね。エレヴェーターを降りてから階段をあがるのは弱ったけど、あの景色だけはいまでも忘れない」
「四階の展望台でポンポンと拍手を打ってお日さま拝みだしたのはえらかったわねえ」
そんなことをいっているうちに、ふとしたことを思い出した。
「エッフェル塔を降りてシャン・ド・マルスを歩いているとさ、だしぬけに、あっ、若旦那、って大きな声をだしたでしょう。あれはなんだったの」
やすは大袈裟に首をひねって、
「へえ、おぼえていないわ。あなたのききちがいでしょう」
と、わからない顔をしてみせた。
とぼけたりするところを見ると、たしかになにかあったのらしいが、伊作をかばいだしたら挺にもおえなくなるのがむかしからの例なので、きいても無駄だと思ってやめにした。