Classici giapponesi con furigana
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ここのつのかぎ
九つの鍵
野村 胡堂
Leggi 九つの鍵 (ここのつのかぎ) di 野村 胡堂 (のむらこどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 21.349 caratteri · 42 schermate
「?」
「私と弟は、このビルディングの南側、私共が今住んでいる場所にあった、日本風の家で育ちました。――戦争が始まって、父は南方へ行ってそれっきり帰らず、母は病気でビルディングが焼け落ちる前に亡くなりました。私と弟が東北の田舎へ疎開して行って、戦争がすんで半年経って帰って見ると、ビルディングは小早川という人の手に渡り、私共がビルディングの中へはいることさえ許されませんでした」
幸子は、見る見る跡も形もなくなって行く自分の家の打こわしをながめながら、涙ながらにこう語るのでした。
「それで、法律上の手続はとってみたのですね」
「もと父親の懇意にしていた方に頼んで調べもし、掛けあってもみましたが、ビルディングは父がまだ南方へ行く前に、小早川という人に売り渡してあったそうで、私たちの言い分は一つも通りません。しかたがないから、せめては昔住んでいた家の跡へ、焼けトタンを集めてこの通り形ばかりの屋根を作り、弟とふたり一年も住んでようすを見ましたが、小早川という人はいろいろ怖い人たちを使って私共をおどかし、その上立ち退き要求の訴えをして、きょうというきょうはその猶予期限が切れたそうでこのありさまです」