Classici giapponesi con furigana
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ふたつのじょぶん
二つの
中谷 宇吉郎
Leggi 二つの (ふたつのじょぶん) di 中谷 宇吉郎 (なかやうきちろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 115.903 caratteri · 236 schermate
大雪山の頂上をすぐ目の前に見るこの凹みの土地は、周囲に亭々たるえぞ松の林をひかえ、風当りはさほどひどくないところである。雪は二丈近くもつもっている。人界からは何十里、土の露出している土地からは何百里、とへだたっているので、見渡す限り、全く汚れのない、純白そのものの雪である。いくら掘っても、塵一つない真白な雪である。その雪の中に、六畳間くらいの穴を掘って、天井も雪でおおう。そしてその中へ、山小屋から電灯線を引き込むと、それで立派な低温の研究室が出来る。
この雪で作った研究室の中で、さっきからもう大分長い間、顕微鏡を覗いている。もう夜はだいぶ更けたらしい。昼でも物声の聞えない土地ではあるが、やはり夜が更けると、何となく、しんしんと四辺が静まりかえって来る。人界から離れ、音から離れた土地にも、夜の沈黙があるというのは、如何にも不思議である。しかしそれは現実にある。えぞ松の梢を渡る風の音、入口の幕のばたばたと鳴る音、それ等は静かさを破るものではなく、沈黙をひとしお強調するものである。
全然音のない世界には、静かさも、また無いのであろう。放送局の防音室の中にあるものは、静かさではなく、音の死骸なのである。