Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ふたつのみち

二つの途

豊島 与志雄

Leggi 二つの途 (ふたつのみち) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 51.102 caratteri · 104 schermate

Aozora Bunko

「いいようにして置いて下さい、」と晩の料理のことを頼んだ。婆やが出て行くと、彼女は書物を投り出して、またぼんやり夢想に沈んだ。

暫くして彼女は立ち上った。画室を出て病室の方へ行った。啓介は眠っていた。看護婦は雑誌を読んでいた。彼女は一寸次の室に坐って、火鉢に炭をついだ。それからまた画室に戻って来た。椅子の上に身を落付けると、前夜の睡眠不足のために、胸の奥がかすかに痛むようで、頭が妙にほてっていた。足の先が冷えきってゆくようなのをじっと我慢していると、幻とも夢ともつかないもののうちに意識が茫としてきた。……彼女は木下が帰って来たのを殆んど知らなかった。

木下は信子の姿を見て、驚いて立ち止った。それから室を出て行こうとした。その時信子は、木下の姿を見て更に驚いて、俄に立ち上った。椅子が倒れた。その大きな音が二人を我に返らした。

「お帰りなさい。」と信子は云った。

木下は扉を閉めて室の中にやって来た。

「何をしていたんです?」と彼は云った。その声は震えを帯びていた。

「この絵を見ていましたの。」と彼女は落付いた声で答えながら、前の画面にまた眼をやった。

「私はもうそれを思い切ってしまいました。