Classici giapponesi con furigana
ja-reading.com
Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.
ふたつのみち
二つの途
豊島 与志雄
Leggi 二つの途 (ふたつのみち) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 51.102 caratteri · 104 schermate
診察する時の医者の取り澄した表情のうちに、彼は自分の病勢の経過を読み取った。「もう寝みましょうか。」と信子が看護婦に云う言葉の調子に、彼は信子の感情の状態を感知した。病室にはいって来てじっと彼の顔を眺むる木下の眼付に、彼は木下の心の動きを見て取った。彼がふと仮睡の眼を開く時、それを見てちらと動いた皆の顔色のうちに、彼は如何なる種類の会話が行われていたかを察した。
然し連続的な推移を包容するには、彼の意識は余りに弱りすぎていた。最近次第に、木下が病室には僅かな間しか留らなくなったこと、信子が頻繁に病室をあけるようになったこと、木下が屡々外出するようになったこと、よく信子が早くから寝床にはいって看護婦が一人遅くまで起きてるようになったこと、木下の顔色が陰鬱になってきたこと、信子の眼が妙に輝いてきたこと、……それらを彼ははっきり意識していなかった。彼にとっては、瞬間のみが、個々に断ち切られた瞬間のみが、存在していた。
斯くて彼は自分の病床の横の方に木下と信子と並んで坐っている時、二人の間に交される眼の閃めきを見て、駭然として不安の念に襲われた。無意味な話題の間に、二人は頻繁に眼を見合った。