Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ふたつのみち

二つの途

豊島 与志雄

Leggi 二つの途 (ふたつのみち) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 51.102 caratteri · 104 schermate

Aozora Bunko

そしてそのまま画室に通った。彼が絵具箱や其他を卓子の上に置いていると、信子が扉口に佇んで彼の方を眺めていた。

「今日は如何でしたの?」と彼女は尋ねた。

「駄目です。」

そして彼が外套を脱いで其処に投り出す途端に、卓子の上の水差が引っくり返った。水は卓子の一部を濡らして床の上に流れた。信子は走り寄って、卓子の上の物を片附けた。

「いいですよ、」と木下は云った、「婆やがしますから。」

然し信子はすぐに雑巾を持って来て拭き初めた。

木下は病人の室の方へ行った。

啓介は黙って彼の顔を見上げた。

「どうだい、今日は。」木下は其処に足を投げ出しながらこう云って、枕頭の容態表を覗き込んだ。「まだ熱が下らないんだね。」

「うむ、何しろ長い間の衰弱が重ってるもんだから。」と啓介は弁解するような調子で答えた。

「食慾はどうだい?」

「さっぱりおありになりませんの。」と看護婦が答えた。

「困ったね。何か食べたいものはないかね。」

啓介は暫く黙っていたが、やがて木下の方に眼を向けながら云った。

「それよりも、君の製作はどうだい?」

「どうも思うようにゆかない。」

「何を描いてるんだ?」

「風景だがね……。