Classici giapponesi con furigana
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にじゅうしのひとみ
二十四の瞳
壺井 栄
Leggi 二十四の瞳 (にじゅうしのひとみ) di 壺井 栄 (つぼいさかえ) in giapponese con furigana. JLPT N3. Tocca una parola per il significato.
N3 · intermedio · kanji e kana moderni · 113.429 caratteri · 227 schermate
ほかにたのむ医者はなく、せめてうまいものでもと心がけたが、なかなか手にはいらなかった。海べにいて、魚さえ手に入らないのだ。魚はありませんか、卵はありませんかと、一ぴきのめばる、一つの卵に三度も五度も頭をさげねば手に入らなかった。そのために母がひとりでかけまわった。
そしてある日、名誉の門標はいつのまにか火鉢の引出しから、門の鴨居の正面に移っていた。母の留子に大吉がそこへ打ちつけたのである。小さな「名誉の門標」は、しかるべき位置に光っていた。「門標」の妻は、しばし立ちどまってそれを眺めた。ひとりの男の命とすりかえられた小さな「名誉」を。その名誉はどこの家の門口をもかざって、恥をしらぬようにふえていった。それをもっともほしがっていたのは、幼い子どもだったのであろうか。
そうして、ついに迎えた八月十五日である。濁流が、どんな田舎の隅ずみまでも押しよせたような騒ぎの中で、大吉たちの目がようやくさめかけたとしても、どうしてそれを笑うことができよう。笑われる毛ほどの原因も子どもにはない。
戦争の残飯をあさる人たちも多いなかへ、生きのこった兵隊が毎日のようにもどってきた。