Classici giapponesi con furigana
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にかいから
二階から
岡本 綺堂
Leggi 二階から (にかいから) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 14.761 caratteri · 30 schermate
十余年前、満洲の戦地で聴いた動物の声で、私の耳の底に最も鮮かに残っているのは、蛙と騾馬との声であった。
蓋平に宿った晩には細雨が寂しく降っていた。私は兵站部の一室を仮りて、板の間に毛布を被って転がっていると、夜の十時頃であろう、だしぬけに戸の外でがあがあと叫ぶような者があった、ぎいぎいと響くような者があった。その声は家鴨に似て非なるものであった。殊にその声の大きいのに驚かされた。
私は蝋燭を点けて外を窺った。外は真暗で、雨は間断なしにしとしとと降っていた。ぎいぎいという不思議の声は遠い草叢の奥にあるらしく思われたので、私は蝋燭を火縄に替えた。そうして、雨の中を根好く探して歩いたが、怪物の正体は遂に判らなかった。私は夜もすがらこの奇怪なる音楽のために脅やかされた。
夜が明けてから兵站部員に訊くと、彼は蛙であった。その鳴声が調子外れに高いので、初めて聴いた者は誰でも驚かされる、しかも滅多にその形を視た者はないとのことであった。漢詩では蛙の鳴くことを蛙鳴といい蛙吠というが、吠の字は必ずしも平仄の都合ばかりでなく、実際にも吠ゆるという方が適切であるかも知れないと、私はこの時初めて感じた。