Classici giapponesi con furigana
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しぐれがさ
人情武士道
山本 周五郎
Leggi 人情武士道 (しぐれがさ) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 24.700 caratteri · 51 schermate
老人はむずむずと乗り出した。
「むろん、その覚悟はできています」
「なに、なに、それでは本気で盗みだす積りなのか、作事奉行の娘ともある者を、嫁入り支度もさせずに掠おうというのか」
「支度などは要りません、拙者は妻を娶るので、衣裳道具が欲しいのではありませんから」
「ばかなことを申せ、仮にも灰島市郎兵衛の娘を、下人のように身ひとつで嫁にやれると思うか、そんなことは儂が許さん」
「失礼ですが呶鳴らないで下さい、耳が割れますから」
「儂は呶鳴りたいときには呶鳴る、貴様の耳なんか勝手に割れろ、どんなことがあっても充分に支度をさせたうえでなくては嫁には遣らんぞ、分ったか、分らなければ分るように云ってやる、貴様は儂の婿になるやつだろう、儂は舅だ、舅はつまり父であって、子と親とは……」
さてこれでどうやら話は纏まったようだ。隣りの部屋でさっきからこのようすを聴いていた幸枝と伊織は、此処まできたとき顔を見合せながらくすっと笑った。
「……幸枝……竜虎ついに相い結んだな」
伊織は妹の耳許で囁いた。
「これから二人とも遠慮なく、腰を据えてゆっくりと口論が楽しめるだろう」
(「キング増刊号」