Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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にんげんしっかく

人間失格

太宰 治

Leggi 人間失格 (にんげんしっかく) di Dazai Osamu (太宰 治) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 73.014 caratteri · 141 schermate

Aozora Bunko

「罪。罪のアントニムは、何だろう。これは、むずかしいぞ」

と何気無さそうな表情を装って、言うのでした。

「法律さ」

堀木が平然とそう答えましたので、自分は堀木の顔を見直しました。近くのビルの明滅するネオンサインの赤い光を受けて、堀木の顔は、鬼刑事の如く威厳ありげに見えました。自分は、つくづく呆れかえり、

「罪ってのは、君、そんなものじゃないだろう」

罪の対義語が、法律とは! しかし、世間の人たちは、みんなそれくらいに簡単に考えて、澄まして暮しているのかも知れません。刑事のいないところにこそ罪がうごめいている、と。

「それじゃあ、なんだい、神か? お前には、どこかヤソ坊主くさいところがあるからな。いや味だぜ」

「まあそんなに、軽く片づけるなよ。も少し、二人で考えて見よう。これはでも、面白いテーマじゃないか。このテーマに対する答一つで、そのひとの全部がわかるような気がするのだ」

「まさか。……罪のアントは、善さ。善良なる市民。つまり、おれみたいなものさ」

「冗談は、よそうよ。しかし、善は悪のアントだ。罪のアントではない」

「悪と罪とは違うのかい?」

「違う、と思う。