Classici giapponesi con furigana
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にんげんひょう
人間豹
江戸川 乱歩
Leggi 人間豹 (にんげんひょう) di 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 155.989 caratteri · 311 schermate
蛇でもない。闇にも光る猫属の眼だ。あの黒い豹の眼だ。
二つの光るものは、だんだん光を増しながら、じっとこちらを睨みつけて動かなかった。あいつだ。怪物はなぜか草むらに身を横たえて、神谷の姿をうかがっているのだ。
実に長い長いあいだ、異様な暗中の睨み合いがつづいた。神谷はもう気力が尽きそうであった。恐ろしさに失神せんばかりであった。
その時、ああ、その時、地上に伏した怪物が、人間の声で物を言ったのだ。まるで地獄の底から響いてくるような、陰気な声で物を言ったのだ。
「おい、すぐに帰りたまえ。おれは君なんかに干渉されたくないのだ」
そして、燐光を放つ両眼が向きを変えて見えなくなると、黒い影が低く地上を這ったまま、サーッと草を分けて遠ざかって行った。彼は一度も立ち上がらなかった。立って走るのではなくて、両手を地面につけて、けだもののように駈け去ったのだ。
神谷はわずかに残る気力を振いおこして、もときた道へと、息のつづく限り走った。十数年も忘れていた少年の心に帰って、何かに追っかけられでもするように、死にもの狂いになって逃げた。走っても走っても、逃げきれない悪夢の中のもどかしさを感じながら。