Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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にんげんひょう

人間豹

江戸川 乱歩

Leggi 人間豹 (にんげんひょう) di 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 155.989 caratteri · 311 schermate

Aozora Bunko

池をとりまく小山の樹木が、思い出したような夜の風にザワザワと鳴るほかには、なんの物音もない。いつもなれば、本堂の前の敷石道には、夜通し駒下駄の音が絶えないのだが、そういう信仰家たちも人間豹には恐れをなしたものとみえる。

大山理髪店主は、やっぱり西郷さんの恰好で、無人の境をノッシノッシと歩いて行った。通り過ぎるベンチというベンチが空っぽだ。ルンペンどもも命は惜しいのである。これがあの浅草公園だろうか。戸惑いをして飛んでもないところへ来たんじゃないかしら。それともおれは、今わるい夢を見ているのではなかろうか。ふとそんな疑いが起こるほどであった。

池を一とまわりして、樹立のあいだの狭い道を通り抜けると、眼の前に円形の広っぱがひらけた。たった一つの常夜燈が、その全景を朧月夜ほどにボンヤリと照らしている。

向こう側の樹立は、闇に溶け込んでほとんど見分けがたいほどであったが、その樹立のあいだをチロチロと動く人影がある。よく見ると、その人は犬を連れている。しかもどうやら二匹らしいのだ。

「おや、感心なやつじゃねえか。熊公見ろよ。おまえの友だちがやってきたぜ」

親方はその方へ近づいて行こうとした。