Classici giapponesi con furigana
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ひとだまのひとつのばあい
人魂の一つの場合
寺田 寅彦
Leggi 人魂の一つの場合 (ひとだまのひとつのばあい) di 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 2928 caratteri · 6 schermate
長さ数センチメートルの長い火花を写真レンズで郭大した像をすりガラスのスクリーンに映じ、その像を濃青色の濾光板を通して、暗黒にならされた目で注視すると、ある場合には光が火花の道に沿うて一方から他方へ流れるように見える。しかし実際はこの火花放電の経過は一秒の百万分一ぐらいの短時間に終了するという事が実験によって確かめられたので、到底肉眼でその火花の生長を認識することは不可能なはずである。それだのにそれが移動するように「見える」というのは、全くわれわれの眼底網膜に固有な生理的効果すなわち一種の錯覚によるものと考えるほかはないのである。そうして、この効果は暗黒にならされた目にあまり強くない光の帯が映ずる場合に特に著しいように思われたのである。
この事実と、前述の二人の見たという火の玉の進行の現象とは何か縁がありそうに思われる。一つの可能性は、上記の浴室の軒の明かり窓の光が一時消えていたのが突然ぱっと一時に明るくなったと仮定すると、その光の帯が暗がりになれていた人の横目には一方から一方に移動する光のように感ぜられたのではないかということである。火花の実験の場合においても、正視するときよりもむしろ少し横目に見るときにこの見かけの移動の感じが著しく、またその移動の方向が目の位置によって逆になるようであった。