Classici giapponesi con furigana
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にんぎょ
人魚
火野 葦平
Leggi 人魚 (にんぎょ) di 火野 葦平 (ひのあしへい) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 7457 caratteri · 15 schermate
まだすっかり陽はおちていずに、水平線のうえにうずくまりかさなりあった鰯雲はまっ赤に染まり、雲と雲とのすきまから、金色の放射線が紺碧の中天へつきささるようにのびだしています。すみきった濃い藍のいろにひろがった海ははるかのかなたまで鷹揚なうねりをたたえ、しずかに渚にうちよせ、うちかえします。銀線の曲折をながながとつづかせて、白砂の浜の波うちぎわは眼のとどかぬところまでかすんでいます。ここの海は荒れることで有名なのですが、風がなければ、こんな静かなときもあるのでしょう。さらさらと竹林のさやぎに似た波の音がこころよく耳にひびいてきます。
ところが、防風林の砂丘をこえたとき、わたしはたちすくんでしまいました。浜辺には人かげもなく、鴎が二三羽とんでいるほか海上にも一隻の舟のかげも見えなかったのですが、ふと渚ちかくになにか白く光るもののあることがわたしの眼にはいったのです。二町ほどもはなれていたでしょうか。その白いものはうちよせかえす波にもまれただよっているようですが、なになのかはじめはわかりませんでした。わたしはいったんこえた砂丘をあとがえり、防風林の裏をまわって、その白いものを正面に見ることのできる位置へ移動しました。