Classici giapponesi con furigana
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やすきちのてちょうから
保吉の手帳から
Leggi 保吉の手帳から (やすきちのてちょうから) di Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 8771 caratteri · 18 schermate
保吉ははっきり彼の後ろに詰め所の入口が見えるような気がした。
「君はこの間――」
しばらく沈黙が続いた後、保吉はこう話しかけた。
「ええ、泥坊を掴まえ損じまして、――」
「ひどい目に遇ったですね。」
「幸い怪我はせずにすみましたが、――」
大浦は苦笑を浮べたまま、自ら嘲るように話し続けた。
「何、無理にも掴まえようと思えば、一人ぐらいは掴まえられたのです。しかし掴まえて見たところが、それっきりの話ですし、――」
「それっきりと云うのは?」
「賞与も何も貰えないのです。そう云う場合、どうなると云う明文は守衛規則にありませんから、――」
「職に殉じても?」
「職に殉じてでもです。」
保吉はちょいと大浦を見た。大浦自身の言葉によれば、彼は必ずしも勇士のように、一死を賭してかかったのではない。賞与を打算に加えた上、捉うべき盗人を逸したのである。しかし――保吉は巻煙草をとり出しながら、出来るだけ快活に頷いて見せた。
「なるほどそれじゃ莫迦莫迦しい。危険を冒すだけ損の訣ですね。」
大浦は「はあ」とか何とか云った。その癖変に浮かなそうだった。
「だが賞与さえ出るとなれば、――」
保吉はやや憂鬱に云った。