Classici giapponesi con furigana
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やすきちのてちょうから
保吉の手帳から
Leggi 保吉の手帳から (やすきちのてちょうから) di Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 8771 caratteri · 18 schermate
保吉はやっと人の悪い主計官の悪戯を発見した。悪戯?――あるいは悪戯ではなかったかも知れない。なかったとすれば実験である。人間はどこまで口腹のために、自己の尊厳を犠牲にするか?――と云うことに関する実験である。保吉自身の考えによると、これは何もいまさらのように実験などすべき問題ではない。エサウは焼肉のために長子権を抛ち、保吉はパンのために教師になった。こう云う事実を見れば足りることである。が、あの実験心理学者はなかなかこんなことぐらいでは研究心の満足を感ぜぬのであろう。それならば今日生徒に教えた、De gustibus non est Disputandum である。蓼食う虫も好き好きである。実験したければして見るが好い。――保吉はそう思いながら、窓の下の乞食を眺めていた。
主計官はしばらく黙っていた。すると乞食は落着かなそうに、往来の前後を見まわし始めた。犬の真似をすることには格別異存はないにしても、さすがにあたりの人目だけは憚っているのに違いなかった。が、その目の定まらない内に、主計官は窓の外へ赤い顔を出しながら、今度は何か振って見せた。
「わんと云え。