Classici giapponesi con furigana
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ロンドンとう
倫敦塔
Leggi 倫敦塔 (ロンドンとう) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 16.166 caratteri · 33 schermate
面影は青白く窶れてはいるが、どことなく品格のよい気高い婦人である。やがて錠のきしる音がしてぎいと扉が開くと内から一人の男が出て来て恭しく婦人の前に礼をする。
「逢う事を許されてか」と女が問う。
「否」と気の毒そうに男が答える。「逢わせまつらんと思えど、公けの掟なればぜひなしと諦めたまえ。私の情売るは安き間の事にてあれど」と急に口を緘みてあたりを見渡す。濠の内からかいつぶりがひょいと浮き上る。
女は頸に懸けたる金の鎖を解いて男に与えて「ただ束の間を垣間見んとの願なり。女人の頼み引き受けぬ君はつれなし」と云う。
男は鎖りを指の先に巻きつけて思案の体である。かいつぶりはふいと沈む。ややありていう「牢守りは牢の掟を破りがたし。御子らは変る事なく、すこやかに月日を過させたもう。心安く覚して帰りたまえ」と金の鎖りを押戻す。女は身動きもせぬ。鎖ばかりは敷石の上に落ちて鏘然と鳴る。
「いかにしても逢う事は叶わずや」と女が尋ねる。
「御気の毒なれど」と牢守が云い放つ。
「黒き塔の影、堅き塔の壁、寒き塔の人」と云いながら女はさめざめと泣く。
舞台がまた変る。
丈の高い黒装束の影が一つ中庭の隅にあらわれる。