Classici giapponesi con furigana
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ちゅうとう
偸盗
Leggi 偸盗 (ちゅうとう) di Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 48.934 caratteri · 97 schermate
阿濃は、窓を離れて、その下にうずくまりながら、結び燈台のうす暗い灯にそむいて、腹の中の子を慰めようと、細い声で歌をうたった。
君をおきて
あだし心を
われ持たばや
なよや、末の松山
波も越えなむや
波も越えなむ
うろ覚えに覚えた歌の声は、灯のゆれるのに従って、ふるえふるえ、しんとした楼の中に断続した。歌は、次郎が好んでうたう歌である。酔うと、彼は必ず、扇で拍子をとりながら、目をねむって、何度もこの歌をうたう。沙金はよく、その節回しがおかしいと言って、手を打って笑った。――その歌を、腹の中の子が、喜ばないというはずはない。
しかし、その子が、実際次郎の胤かどうか、それは、たれも知っているものがない。阿濃自身も、この事だけは、全く口をつぐんでいる。たとえ盗人たちが、意地悪く子の親を問いつめても、彼女は両手を胸に組んだまま、はずかしそうに目を伏せて、いよいよ執拗く黙ってしまう。そういう時は、必ず垢じみた彼女の顔に女らしい血の色がさして、いつか睫毛にも、涙がたまって来る。盗人たちは、それを見ると、ますます何かとはやし立てて、腹の子の親さえ知らない、阿呆な彼女をあざわらった。