Classici giapponesi con furigana
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にせけいじ
偽刑事
川田 功
Leggi 偽刑事 (にせけいじ) di 川田 功 (かわだいさお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 7368 caratteri · 15 schermate
彼女が再び出て来た時、持って居た買物は風呂敷に包まれて居た。
店を出て四つ角を一つ通り越すと、大きな銀行の建物があった。周囲は広い余地を残し、鈴懸の木立から思い出した様に枯葉が零れて居た。垣根と云うのは石の柱と、其を結び付けて垂れ下った鉄鎖がある丈けで、人の出入も自由であった。彼女が其処へ差蒐った時、彼は直ぐ其後へ追付いて居た。此儘黙って過ぎれば只路傍の人として終って了うのである。併も彼は大なる秘密を握って居る。何とか利用しないでは置けないと云う気に成って了った。彼は一ト足歩度を伸ばすなり、妙に好奇心の加わった空元気を出して呼びかけた。
「一寸お尋ね致しますが」と云った其瞬間、彼は其後をどう云う可きかに付いて余り不用意である事に気が付いた。後悔の雲がぱっと頭に拡がった。聞えなければ可いがと云う願望も同時に起った。併し其等は一切無益であった。彼女は歩度を緩めて彼を振向いた。足を停めた。最早取返しは付かなくなった。狼狽の余り却て誤間化す事が出来なかった。
「貴女は今彼処の店で買物をなさった様ですねえ」
「致しましたが、夫れがどうだと被仰るんです」
女は少しも驚かないのみか、寧ろ待ち望んででも居た様な落着方であった。