Classici giapponesi con furigana
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にゅうばい
入梅
久坂 葉子
Leggi 入梅 (にゅうばい) di 久坂 葉子 (くさかようこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 9934 caratteri · 20 schermate
「坊ちゃまに」と、たどたどしく書かれた紙きれと共に木で作った船がおいてあった。ゆうべ、よっぴて作りあげたのだろう。ちゃんと帆柱をたて、帆まで張ってあった。その布は、なつかしい作衛の働着だった。さつまの絣の私の長い思い出のものだった。貧しい贈物を喜んだ行雄は、それを小さな手洗鉢の流れで、浮かばせながら遊んでいた。その姿をみながら私は二人っきりの生活が一番いいと思った。行雄と私の間をさくものはない。私はどんなに行雄を愛したっていいのだ。行雄の眼に、ふっと夫をみた。私は行雄を呼んだ。
「お母ちゃま、何」
かけ上って来た行雄を私は縁側にしっかり抱いた。
「何? 痛いよう」
強く抱きしめた両手の中で行雄はどたばたしていた。
作衛は今頃、汽車にのって入歯をかたかたさせながらどんな気持だろうか、だが、そんなことはどうでもよかった。
「そうら、雨よ。御家へ入りましょう」
行雄をかかえて座敷に入った。二三日つづきそうな雨だった。植木が、つやつやした葉をして、その奥から沈丁花の香りが、かすかに流れて来た。
〈昭和二十五年八月〉