Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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やつがたけのまじん

八ヶ嶽の魔神

国枝 史郎

Leggi 八ヶ嶽の魔神 (やつがたけのまじん) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 160.664 caratteri · 323 schermate

Aozora Bunko

と、次々に深紅の血汐が、ポカリポカリと水面へ浮かび、その辺一面見ている間に緋毛氈でも敷いたように、唐紅と一変した。

侶船の武士達はこれを見ると、いずれも蒼褪めて騒ぎ立て、

「ご帰館ご帰館!」と叫ぶ者もある。

「灘兵衛が殺されたに相違ない」「悪魚の餌食となったのであろう」「いや巫女どもの復讐じゃ!」「水狐族めの復讐じゃ!」

「ご帰館ご帰館!」「船を廻せ!」互いに口々に詈り合う。

「待て!」とこの時頼正は、凛然として抑え付けた。「帰館する事罷り成らぬ! 誰かある、湖中へ飛び入り灘兵衛の生死を見届けるよう!」

「…………」

これを聞くと船中の武士ども一度にハッと吐胸を突いた。誰も返事をする者がない。互いに顔を見合わせるばかりだ。

「誰かある誰かある、灘兵衛の生死確かめよ!」

船首に立った頼正は地団駄踏んで叫ぶのであったが、しかし進み出る者はない。

「臆病者め! 卑怯者め! それほど悪魚が恐ろしいか! それほど湖水が恐ろしいか! 三万石諏訪家の家中には、真の武士は一人もいないな! 止むを得ぬ俺が行く! 俺が湖中へ飛び込んで灘兵衛の生死確かめて遣わす!」

云うと一緒に頼正は羽織を背後へかなぐり捨てた。