Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

ja-reading.com

Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.

めいどこうしんきょく

冥土行進曲

夢野 久作

Leggi 冥土行進曲 (めいどこうしんきょく) di 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 24.807 caratteri · 50 schermate

Aozora Bunko

「いやですいやです。兄さん。死んじゃ厭です。……生きて……生きてて下さい生きてて下さい……」

私はとうとう混乱してしまった。セグリ上げて来る涙を奥歯で噛締めた。静かに弟の両腕を引離して寝台の上に座り直した。

「馬鹿……俺が自殺でもすると思っているのか。馬鹿……俺は一週間でも一時間でもいい、残っている生命を最後の最後の一秒までも大切に使うんだ。それよりも早く大寺先生の処へ行って御礼を云って来い。お蔭で癌じゃない事がわかって、兄貴が喜んでおりますと、そう云って来い。……直ぐに行って来い」

「ハイ……」

弟は柔順にうなずいた。寝台の枕元に掛けたタオルに薬鑵の湯を器用に流しかけて、涙に汚れた顔をゴシゴシと拭い初めた。

「それから何でも冷静にするんだぞ。どんな事があっても騒ぐ事はならんぞ」

「ハイ……」

弟は湯気の立つタオルの中でうなずいた。

弟が出て行くと直ぐに私は大急行で寝巻を脱いで、永年着古した背広服に着かえた。手廻りの品々をバスケットに詰めた。夜具を丸めて大風呂敷に包んだ。その風呂敷の上にピンで名刺を止めて万年筆で小さく書いた。

「俺は行衛を晦ます。死際に一仕事したいからだ。