Classici giapponesi con furigana
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しゅっせ
出世
菊池 寛
Leggi 出世 (しゅっせ) di 菊池 寛 (きくちかん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 8840 caratteri · 18 schermate
電車に乗る時に買った新聞を読む時に風呂敷包が邪魔になったので、自分の背と車台の羽目板の間に置いたことに気がついた。内幸町であわてて降りた時に、すっかり忘れてしまったのだと思った。
彼は、その場合にそれほど大切な品物をぼんやり忘れてしまう自分の腑甲斐なさがしみじみと情なかった。そんなに、ぼんやりとしていて大切な品物を容易に忘れてしまうようでは、俺は激しい世の中に立っては、とても存在していかれない人間ではあるまいかとさえ思われた。
彼は茫然とした淋しい情ない心持で、まず三田の車庫へ行ってみた。が、そこにいた監督は「巣鴨の電車ならば、春日町の車庫か、巣鴨の車庫かへ、車掌が届けているでしょう。そんな風呂敷包なら誰も持って行かないでしょう」といった。
彼は、監督の言葉で、やっと安心して、すぐ引っ返して春日町へ行った。三田から春日町までの、あの長い丁場を、彼はどんなにいらいらした心持で乗ったことだろう。が、春日町へ着いてみると「希臘彫刻手記」は、そこへも来ていなかった。
「ああきっと、本郷回りの電車でしょう。それだと、巣鴨の車庫へ届けたのでしょう」と、そこの監督が、彼の希望を繋いでくれた。