Classici giapponesi con furigana
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ひみつ
刺青・秘密
谷崎 潤一郎
Leggi 刺青・秘密 (ひみつ) di 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 32.935 caratteri · 66 schermate
成る可く人目にかからぬように毎晩服装を取り換えて公園の雑沓の中を潜って歩いたり、古道具屋や古本屋の店先を漁り廻ったりした。頬冠りに唐桟の半纏を引っ掛け、綺麗に研いた素足へ爪紅をさして雪駄を穿くこともあった。金縁の色眼鏡に二重廻しの襟を立てて出ることもあった。着け髭、ほくろ、痣と、いろいろに面体を換えるのを面白がったが、或る晩、三味線堀の古着屋で、藍地に大小あられの小紋を散らした女物の袷が眼に附いてから、急にそれが着て見たくてたまらなくなった。
一体私は衣服反物に対して、単に色合が好いとか柄が粋だとかいう以外に、もっと深く鋭い愛着心を持って居た。女物に限らず、凡べて美しい絹物を見たり、触れたりする時は、何となく顫い附きたくなって、丁度恋人の肌の色を眺めるような快感の高潮に達することが屡々であった。殊に私の大好きなお召や縮緬を、世間憚らず、恣に着飾ることの出来る女の境遇を、嫉ましく思うことさえあった。
あの古着屋の店にだらりと生々しく下って居る小紋縮緬の袷―――あのしっとりした、重い冷たい布が粘つくように肉体を包む時の心好さを思うと、私は思わず戦慄した。