Classici giapponesi con furigana
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なんちしんじゅう
南地心中
泉 鏡花
Leggi 南地心中 (なんちしんじゅう) di 泉 鏡花 (いずみきょうか) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 39.205 caratteri · 79 schermate
蒼空の下を、矢輻の晃々と光る車が、駈けてもいたのに、……水には帆の影も澄んだのに、……どうしてその時、大阪城の空ばかり暗澹として曇ったろう。
「ああ、あの雲だ。」
と初阪は橋の北詰に、ひしひしと並んだ商人家の、軒の看板に隠れた城の櫓の、今は雲ばかりを、フト仰いだ。
が、俯向いて、足許に、二人連立つ影を見た。
「大丈夫だろうかね。」
「雷様ですか。」
男衆は逸早く心得て、
「串戯じゃありませんぜ。何の今時……」
「そんなら可いが、」
歩行出す、と暗くなり掛けた影法師も、烈しい人脚の塵に消えて、天満筋の真昼間。
初阪は晴やかな顔をした。
「凄かったよ、私は。……その癖、この陽気だから、自然と淀川の水気が立つ、陽炎のようなものが、ひらひらと、それが櫓の面へかかると、何となく、※と美しい幻が添って、城の名を天下に彩っているように思われたっけ。その花やかな中にも、しかし、長い、濃い、黒髪が潜んで、滝のように動いていた。」
城を語る時、初阪の色酔えるがごとく、土地馴れぬ足許は、ふらつくばかり危まれたが、対手が、しゃんと来いの男衆だけ、確に引受けられた酔漢に似て、擦合い、行違う人の中を、傍目も触らず饒舌るのであった。